前回ワックス見本で彫ったffを仕上げまで見たいというリクエストがございました。
今回は仕上げ工程までをご説明致します。
▼まずは鋳造に出す前に気になった箇所を修正します。
見た目では違いがあまりわかりませんが10箇所近く修正してあります。
もしこの段階から金属にした方が加工がしやすい場合は一度鋳造に出します。
丸カンをつけたりエッジを立てたりミル打ちをしたりする場合ですね。
今回は特に二次加工が無いのでワックスをそのままシリコンで型どりします。
どちらもメリットデメリットがありますので作りたいもので使い分けましょう。
■金属にするメリットとデメリット
○原型原型が残るので丸カン溶接などのアレンジ加工がしやすい。
×鋳造収縮が二度発生し×97%×97%になってしまうため石留めなどがある場合注意が必要。
×万一鋳造ミスが発生した場合、これまでの苦労がすべて消滅する。
■ワックスから型を取るメリットとデメリット
○鋳造収縮がすくなく原型からのサイズダウンが気にならない。
○業者さんに出した場合の完成までの期間が短くなる。
×原型はある程度残るがほぼ確実に破損する。
×業者さんに出した場合の費用が割高になる。
自分でシリコン型を取る事も出来ますが、それなりのテクニックと道具が必要です。
はじめての方は費用対効果を考えると業者さんに委託した方が確実でしょう。
私はいつも鋳造やさんに委託しています。
▼こちらがゴム型です。
特に指定が無い限り、湯道(銀が流れ込む道)は良い感じの場所につけてくれます。
ここだけは避けて下さい。などと指定する事も可能です。
▼ワックス原型はこんな感じでだいたいバラバラになります。
そのまま鋳造を依頼すれば指定の金属で複製してもらえます。
▼今回は真鍮で鋳造しました。
▼これが湯道の残りです。
▼金属用のヤスリで頑張って削ります。
▼このくらいまで削ったら油目ヤスリに持ち替えて整えます。
▼このくらいまで油目で整えたら全体にも油目ヤスリをかけましょう。
▼油目ヤスリだけでもこれくらい光ってきます。
サンドペーパーはスティックを使ってもいいのですが量が多いと大変です。
そこでお手製のロールサンダー(巻いたサンドペーパーみたいなもの)を作ります。
リューターが必要ですので無い人は頑張ってスティックで手ヤスリです!
▼リューター用のマンドレルというビットを用意します。
これはメジャーなサイズが2種類あるので購入時にはよく確かめましょう!
▼サンドペーパー(3Mの乾式400番がオススメ)の裏に両面テープをはりつけます。
▼マンドレルにはさんでくるくる巻きつけます。
▼お手製ロールサンダーの完成です!
▼リューターさえあれば仕上げ時間を大幅に短縮できます。
今回部分的に仕上てますが、全体に油目をかけておいた方が後々楽です。
▼特にこういうシリコンの合わせ目が周囲にある場合はサンダーでは苦労します。
▼綺麗な仕上げを目指すならこういう場所はちゃんと油目→ペーパーの順を守りましょう。
▼入りにくい箇所には三角のスティックを使うと楽です。こちらもお手製です。
外周はヤスリもリューターも通るので簡単ですが内側は大変です。
▼精密ヤスリに両面テープペーパーを貼り付けて根気良く磨いてゆきます。
▼シリコンの合わせ目のバリがなくなるまで全体にペーパーがかかりました。
▼次は裏面です。平らな場所にサンドペーパーを置いて裏面をこすり付けます!
▼この作業でだいたい指先をやけどして水ぶくれをつくります。数が多いと特に大変。
▼まだフラットになっていないのがわかりますね。もうちょっと頑張ります。
▼これなら大丈夫。ライトを当てながら作業するとわかり易いです。
▼1500番くらいのペーパーで仕上げです。綺麗にフラットになりましたね。
私は手ヤスリでペーパーをかけてますが、業者さんに仕上げを委託してもここまではしません。
湯道をグラインダーで削ってバリが残ったままバフで研磨して終了がオーソドックス。
美しい仕上げのために手ヤスリも依頼できますが仕上げ価格は凄いことになります。
丁寧に手仕上げすればやはり仕上も違うので自分でやる時は頑張りましょう。
次の工程もアンティク仕上げには不要ですが美しさのために私はもうひと手間かけています。
▼セームバフと研磨材。
私は
ノンクロンという研磨材を使っています。
通常銀細工にはよく
青棒というものを使います。
どちらかはお好みで。
▼バフをかけると表面が輝きヤスリムラが発見しやすいです。
▼入りにくい場所には細く切ったセームバフを使っています。
▼さらにそれでも入らない場所には研磨材をつけたタコ糸を使います。
ここまでする必要はあまり無いのですが、仕上げの美しさにはやはり差が出ます。
▼頑張って磨ききりました。仕上前との差はこんな感じです。
大変な作業はここの下準備までくらいです。
ですが、もっと大変なのはこの作業を大量に同じクオリティで行うことです。
私の尊敬する彫金作家さんから頂いた言葉は今でも常に心に留めています。
「最初の一個と最期の一個を同じ情熱で仕上るのがプロのお仕事」
これがいかに大変な事かはやってみるとよ~く解ります。
最期は燻しと仕上げの磨きです。
銀製品だと硫黄臭い燻し液を使いますが真鍮の燻しは出来ません。
▼そこで右側の銀黒という商品を使います。
▼これを使えば真鍮を燻すことが出来ます。
が、定着がよくなく皮膜のように燻しがすぐにはがれてきます。
▼何度も麺棒で燻し液をぬりこすり定着させます。
▼燻し液を水でよく洗い流して乾かします。
▼アンティクな仕上げにはこの道具を使います。
3Mのスパイラルというディスクとはさむためのマンドレルです。
このペラペラの円盤、1ダースで1,500円くらいします。
私は一度に6枚使って1イベントで使い切ってしまいます。
すぐに研磨力が落ちるのでコスパは非常に悪いです。
でも仕上げが綺麗なので重宝しております。
▼リューターを使って仕上げの研磨をします。
上の写真は左側にかるくかけた状態です。
燻しの残し具合はお好みで。
ちなみに燻しを磨く仕上げの時は手元のスポットライトを切るのをオススメします。
ライトが当たりすぎると反射で燻しの残り具合が良く見えないんです。
▼表が終わったら裏面も同様に。
▼頑張って最後まで同じクオリティで仕上ましょう。
▼完成です!
いかがでしたでしょうか?
今回の製作ではロウ付けなどの工程ははさんでおりません。
ロウ付けは本当に慣れと修練が必要です。
画像や動画では「見て温度を感じる」というのがどうしても伝わりません。
ここから先にもっと技術を習得したい場合は彫金教室に通われるのをオススメします。
週1回で月謝が8,000円くらいの所はたくさんあります。
地金細工も学べる所だと作品の幅も広がると思います。
皆さんも是非チャレンジしてみてください!
ご質問等はTwitterへどうぞ。https://twitter.com/TAK_khronos
各種製作ブログはこちらにもございます。燃素商會活動錄http://ameblo.jp/nenso/